日本の街を歩くと、電柱と電線が景観の一部になっている。けれど、無電柱化を『街をきれいにする施策』だけで捉えると、本質をかなり見落とす。
国土交通省は2026年6月2日、第3次無電柱化推進計画を決定した。今後5年間で新たに約1,000kmの整備完了を目標とし、約4,000kmの計画策定を掲げている。目的として前面に出ているのは、景観だけではなく、防災・強靱化、安全で快適な歩行空間、観光振興だ。
なぜ全部を一気に地下へ移せないのか
既成市街地では、地下に上下水道、ガス、通信など複数のインフラがすでに存在する。道路幅も限られ、電線共同溝や管路を追加するには工事空間、費用、工期、複数事業者との調整が必要になる。
つまり『電柱をなくす』という見た目の変化の裏には、都市の地下空間を再設計する作業がある。新しい街区と、長年使われてきた既成市街地では難易度が違う。
無電柱化の価値は3つに分けると見やすい
1. 防災
国交省は、災害時の電柱倒壊による道路寸断を防ぎ、緊急車両の通行や復旧活動につなげることを重要な効果としている。第3次計画でも、道路啓開の実効性を高める区間が重点化されている。
2. 歩行空間
電柱が歩道上からなくなれば、有効幅員を確保しやすくなる。ベビーカー、車いす、高齢者、通学路など、景観とは別の便益がある。
3. 景観・観光
歴史地区や観光地では、電線が視界から消えること自体が地域価値につながりうる。ただし、全国一律に同じ便益が出るわけではない。
『日本全体を地中化するか』ではなく『どこからやるか』
重要なのは優先順位だ。緊急輸送道路、駅前再開発、観光地、歩行者の多い狭い道路、更新時期を迎えたインフラなど、社会的リターンが大きい場所から進める方が合理的だ。
国土交通省の無電柱化推進ページでも、2026年の第3次計画に加え、防災・安全・景観の3つの目的が明示されている。
街の『ごちゃつき』は政策の入口になる
街を歩いて感じる小さな違和感は、都市政策を考える入口になる。電柱一本を見るだけでも、道路空間、災害対応、インフラ更新、観光、歩行者安全がつながっている。
無電柱化は『美観か、コストか』という二択ではない。限られた予算と空間の中で、どこへ先に投資すれば社会全体の便益が大きくなるかを考える都市資産管理の問題だ。
Sources / Updated 2026-09-12
本記事は公開一次資料を基にした構造整理です。特定都市の整備効果や費用を一律に断定するものではありません。


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